導入事例 全国農業協同組合連合会広島県本部(JA全農ひろしま)
Smart at AIで問い合わせ対応を効率化。
「業務フローに組み込めるAI」が地方拠点のDXを加速させる
全国農業協同組合連合会広島県本部(JA全農ひろしま)
JA全農ひろしまは、業務プロセスの中へ生成AIを自然な形で組み込んでいくべく、kintoneへSmart at AIを導入した。地方組織から全国本部へ生成AIの利用を申請したのは全農初のケースであり、これにより問い合わせ対応の効率化と回答品質の標準化を実現した。
kintoneで業務改善が進む中、生成AIの業務活用を模索
広島県の農業を支えるJA全農ひろしまは、広島県内のJAを通じて農畜産物を集荷・加工して消費者に届ける「販売事業」と、肥料・農薬・農業機械などを生産者(組合員)に供給する「購買事業」を柱に、農業生産から暮らしまでを幅広く支える経済事業を担っている。
同組織では2022年10月にkintoneを導入し、農作物の出荷計画の自動集計や工場のシフト自動作成、各種申請業務の効率化など、紙やFAX中心だった周辺業務のデジタル化を着実に進めてきた。2025年度からは各部署にkintone担当者を1名ずつ配置し、月1回のハンズオン研修を実施するなど、現場主導の市民開発にも取り組んでいる。
一方で、生成AIの業務活用は模索段階にあった。JA全農全体としては2025年10月からMicrosoft Copilotが全職員向けに利用可能となったが、実態としては議事録の要約やアンケート素案の作成、アイデア出しなど、個人業務の補助にとどまっていた。
改革推進部 JA営農支援課の橋詰雄太氏は当時の課題感をこう振り返る。「最初は私もそうでしたが、『AIをどう使えばよいかわからない』というのが職員たちの正直なところでした。我々が考えなければならないのは、業務プロセスの中にどう自然にAIを組み込んでいくか、という点でした」
Smart at AIとの出会い——「個人のツール」ではなく「業務フローに組み込めるAI」
そうした中で転機となったのが、橋詰氏が東京で開催されたサイボウズデイズに参加した際、会場のブースでSmart at AI for kintone Powered by GPT(以下、Smart at AI)の紹介を受けたことだった。
「生成AIをkintoneの中で使えるという点が非常に新鮮に感じられました」と橋詰氏は語る。従来だとkintone内のデータを手動で生成AIへ入力し、その出力結果もまた手動でkintoneへ入れなくてはならないところを、Smart at AIならkintone内で完結できるところに惹かれたという。
同氏が特に着目したのは、CopilotとSmart at AIの性質の違いだ。Copilotは個々の職員がプロンプトを書いて使う個人のチャットツールであるのに対し、Smart at AIはkintoneの業務アプリや業務フローの中にプロセスとして組み込むことができる。この違いは、同組織が描くAI活用の理想像と合致していた。
「全員が生成AIを使いこなすのは現実的ではないと考えています。我々のセクションや各部署のキーマンがAIの知識を習得して業務の中に組み込んでしまい、一般の職員は意識せずに使っていく体制が理想です。Smart at AIはまさにその考え方に合っていました」(橋詰氏)
報告を受けた同課課長の藤井隆介氏も、すぐに可能性を感じたという。「我々はホームページやSNSで各種情報発信を行っており、生産者や消費者の方々から問い合わせをいただくことも多いです。回答のフローにSmart at AIを入れればさまざまな可能性が広がるだろうと感じました」と藤井氏は語る。
全農初のケース——地方からの申請によって生成AIの利用が全国的に承認
ただし、導入までの道のりは平坦ではなかった。JA全農全体として、生成AIツールの利用には東京の本所が定めたガイドラインがあり、所定のチェックリストをすべてクリアしなければ利用ツールとして認められない仕組みになっている。
「内部の情報を外部に出すかどうかという点が特に厳しく審査されました。チェック項目も非常に多く、ニュアンスの確認なども含めて承認までにかなりの時間がかかりました」と藤井氏は語る。
厳しい審査の末にSmart at AIの導入は認められた。全農本部が標準的に定めたものでなく、地方組織からの申請によって生成AIツールの利用が全国的に承認されたのは、おそらくJA全農として初めてのケースだったという。JA全農ひろしまの上層部がIT活用に理解があり「やってみよう」という風土があったことも、この突破を後押しした。
Smart at AIで問い合わせ対応の効率化と回答品質の標準化を実現
現在Smart at AIが具体的に活用されているのは、消費者からの問い合わせ対応業務だ。同組織のWebサイトには一般消費者向けの問い合わせフォームが設置されており、問い合わせ内容はデータとしてkintoneに自動で取り込まれる。Smart at AIはプロンプトに沿いつつ、kintoneアプリ内に蓄積された過去の対応履歴などを用いて返信文案を自動生成する。担当者はその文案を確認・修正し、kintone上のワークフローで上司の承認を経て返信している。
この仕組みが生まれた背景には、現場の切実な課題があった。問い合わせ窓口を担当する部署では、従来は担当者が返信文を1から考え、作成した文案を印刷して上司に確認してもらう、というプロセスを取っており、1件の対応に相当の時間がかかっていた。また、多方面からの問い合わせを一手に引き受けるため、他部署への確認が必要な内容も多かったという。「文案の確認のために上司を確保する必要があったのが、kintoneの中で業務の空き時間に確認してもらえるようになり、返信までの時間が短縮されました」と橋詰氏はその効果を語る。
具体的な効果としては、従来は1件あたり60分から90分ほどかかっていた返信文案作成作業が、Smart at AI導入後は約10分まで縮小された。文案作成業務は月に10件ほどあるため、月に換算すると約8~13時間の工数削減となる。加えて問い合わせ対応のリードタイムも、従来は平均2~3営業日だったのが、Smart at AI導入導入により平均1~2営業日にまで短縮された。
藤井氏は、回答品質の標準化という副次的な効果も指摘する。「対応する職員の知識や経験によって問い合わせへの回答内容に差が出てしまっていました。それをある程度標準化・底上げできたのは大きいですね。また、AIが業界用語を噛み砕いて、消費者の方に分かりやすい形で回答してくれるという効果もあります」
もちろん、AIが生成した回答をそのまま送信するのではなく、必ず人のチェックを介在させることで、運用上の安全性を確保している。
「場面ごとの具体化」でAI活用を広げていく
JA全農ひろしまでは、問い合わせ対応の事例を起点に、Smart at AIの活用範囲を広げていく方針だ。橋詰氏は「問い合わせ対応の事例は、他の部署でもイメージが湧きやすい。わかりやすい成功事例を着実に増やしていきたい」と語る。
さらに、kintoneに蓄積された業務データのAI活用にも意欲的だ。同課の青木菜月氏は「kintoneに入ってきたデータをAIで加工・変換して、次のアクションにつなげるようなことができたらいいなと思います」と展望を述べる。
藤井氏は、生成AI活用が広がるための鍵は「場面ごとの具体化」にあると強調する。「要約に使うのか、クリエイティブに使うのか、商談資料を作るのか、データの予測に使うのか――生成AIはまだ”くくり”が大きすぎます。活用方法を場面別に考えて適応していき、業務の中にAIが自然に埋め込まれている状態にする、それが我々の目標です」
kintoneで築いた業務改善の土壌の上に、Smart at AIで生成AIを業務フローへ組み込む。JA全農ひろしまの取り組みは、組織全体のDXを現実的に前へ進めるモデルケースといえるだろう。
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