ブログ
kintoneプロセス管理の使い方完全ガイド|承認フロー・通知・条件分岐まで初心者でもわかる解説
「手作業の承認フローに時間がかかっている」「担当者ごとの対応状況がわからず、業務の進捗が見えにくい」――そんな悩みを抱える企業にとって、kintoneのプロセス管理機能は強力な解決手段です。
kintoneは業務アプリをノーコードで構築できるクラウドサービスであり、プロセス管理機能を活用することで申請・承認・差し戻しといった業務の流れを標準化し、業務の属人化を防ぐことができます。
通知機能や条件分岐の設定により現場の負担を最小限に抑えつつ、スピーディーな意思決定を実現できます。
本記事ではkintoneプロセス管理の基本から設定手順、応用パターンまでを網羅的に解説。
これから導入を検討している方、既に導入済みで活用を深めたい方の双方に向けて、実践的なノウハウをわかりやすく紹介していきます。
またkintoneの基本的な情報について詳しく知りたい方は是非こちらをご参考ください。
目次
kintoneプロセス管理とは何か
近年、業務の効率化やDX推進の流れが加速する中で、あらゆる部門において業務プロセスの標準化や自動化が求められています。
こうしたニーズに応えるために多くの企業が注目しているのがkintoneの「プロセス管理」機能です。
プロセス管理は業務の進行状況を「ステータス」で可視化し、誰が次に対応すべきかを明確にしたり、特定の条件で通知や承認フローを自動化したりできる仕組みです。
本章ではプロセス管理がなぜ必要とされているのか、どのような課題を解決できるのか、そしてその基本構成について詳しく解説していきます。
kintoneプロセス管理が求められる背景
デジタルツールが普及する一方で多くの現場では未だに手作業や属人的な運用に頼った業務が残されています。
こうした状況は業務の非効率や引き継ぎミス、担当者依存によるリスクを生み、企業全体の生産性を下げる原因となっています。
さらに働き方改革やリモートワークの普及により、業務フローの透明化とルール化がより一層重要視されるようになりました。
kintoneのプロセス管理はこのような時代背景に即したソリューションとして注目されており、企業のDX推進を強力に後押しするツールとして導入が進んでいます。
業務の属人化・非効率の課題
担当者の経験や判断に依存した業務運用では業務フローが暗黙知化されやすく、担当者が不在になると処理が止まってしまうといった問題が生じます。
例えば経費精算や対応履歴の共有が口頭やメールに頼っている場合、漏れや遅延が発生しやすく、組織全体のパフォーマンスに悪影響を与えます。
このような属人化された業務体制は担当者の退職や異動などにより一気に混乱を招くため、リスク管理の観点からも見直しが必要です。
業務フローの標準化・見える化の重要性
業務フローの標準化とは誰が見ても同じ手順で業務を進められるように業務プロセスを明確化することです。
これによりタスクの抜け漏れを防ぐだけでなく、新人教育の効率化や業務品質の平準化にもつながります。
さらに進行中の案件のステータスや履歴を可視化することで、進捗の把握やトラブルの早期発見が可能になります。
kintoneのプロセス管理機能ではこうした「見える化」や「フローの一元管理」が実現でき、業務の信頼性と再現性が高まります。
kintoneプロセス管理で解決できること
kintoneのプロセス管理を活用することで、上記のような属人化や非効率といった課題を柔軟かつ直感的に解消できます。
プロセスごとの処理ステータスや対応者を明確にし処理の流れを自動化することで、ミスや遅延を削減し組織全体の業務効率を向上させることが可能です。
加えて、条件によるフロー分岐や通知設定など複雑な業務にも対応できる点も大きなメリットです。
業務改善が期待できるユースケース
例えば、経費申請フローにおいて金額に応じた承認者の振り分けを自動化することで、担当者の判断ミスや手戻りが大幅に減少します。
また、問い合わせ対応履歴をkintone上で一元管理しステータスを可視化することで、対応漏れや遅延が減り顧客満足度の向上にもつながります。
このようにプロセス管理を取り入れることで、日々の業務における確実性とスピード感の両立が実現できます。
プロセス管理の活用メリット
kintoneのプロセス管理には業務の効率化と見える化を促進する多くの利点があります。
通知の自動送信により作業の抜け漏れを防止でき、履歴の記録機能によって進捗状況の把握も容易になります。
加えてアクションごとに業務ルールを反映できるため、ミスの抑制や対応の一貫性が保たれます。
作業者や権限の設定が柔軟で責任範囲の明確化にもつながり、業務の属人化を防ぐ仕組みにもなっています。
業務フローの変更も簡単に行えるため、導入後も業務に応じた最適化を継続できるのが大きな特長です。
kintoneプロセス管理の基本構成
kintoneのプロセス管理は、3つの要素「ステータス」「作業者」「アクション」によって構成されており、これらを組み合わせることで多様な業務フローに対応できます。
それぞれの機能の役割と設定方法を理解することで、自社の業務に即した柔軟なプロセス設計が可能になります。
ステータスとは
ステータスは業務の進捗状況を示す「状態」のことです。
例えば「申請中」「承認待ち」「完了」などのフェーズを明確に区分することで作業がどこまで進んでいるかを一目で確認できます。
各ステータスにはアクションや作業者を紐づけられるため、業務の流れを定義する基盤となります。
作業者とは
作業者は各ステータスにおける処理の担当者を指します。
kintoneでは「固定」もしくは「次のユーザーから選択」といった方式で柔軟に設定可能です。
これにより、業務ごとに適切な担当を自動的に割り振ることができ、人的ミスの削減や引き継ぎのスムーズ化が実現できます。
アクションとは
アクションとはステータス間を移動するための操作要素です。
「承認する」「差し戻す」「スキップする」などの操作をボタンとして定義し、利用者が直感的に操作できる仕組みです。
アクションには条件を設定できるため、特定の状況下でのみ操作可能にするなど、セキュリティや業務ルールの厳格化にも対応可能です。
kintoneプロセス管理の設定手順
プロセス管理機能を活用するにはステータス・作業者・アクションを適切に設定する必要があります。
これらの要素は業務の進行や処理担当を明確にする基盤であり、設計段階での判断が実運用に大きな影響を及ぼします。
本章ではそれぞれの設定方法を失敗例や注意点も交えて順に解説していきます。
ステータスの設定方法
業務プロセスをkintone上で管理する第一歩は、「ステータス」の設定です。
これは、レコードの進捗状況を示すラベルであり、業務のどの段階にあるかを明示するものです。
適切なステータス設計は、業務の可視化と属人化防止に直結します。
業務フェーズごとのステータス登録手順
プロセス管理を有効化した後、ステータスを追加・編集することで、業務の各工程を定義します。
例えば「備品購入申請」アプリであれば、「未申請」「上長確認中」「差し戻し」「承認済」といったステータスを登録し、業務の流れに沿って並べます。
ステータスは管理画面でドラッグ&ドロップによって順序の調整が可能で、業務の視覚的なフロー構築がしやすい設計になっています。
1. kintoneアプリの設定画面で「プロセス管理」を開く
2. 「プロセス管理を有効にする」にチェックを入れてONにする
3. 初期ステータス(未処理、処理中、完了)を確認・必要に応じて削除
4. 「+」ボタンをクリックし、新しいステータスを追加
5. 各ステータスに名前を設定(例:「未申請」「上長確認中」「差し戻し」「承認済」)
6. 左の並び順アイコンを使ってステータス順を整理
7. 入力内容を保存する
作業者の設定方法とその違い
ステータスごとに「誰が処理を行うか」を明確にするのが「作業者」の設定です。
担当者の自動割り当てや業務の引き継ぎを円滑に行ううえで不可欠な要素です。
作業者を固定する場合の設定方法
特定の業務で常に同じ担当者がアクションを行う場合は、「作業者を固定する」方式が適しています。
例えば、経理部門の承認フローにおいて「経理部長」が一貫して承認を行う場合、この方法を用います。
設定画面で、作業者欄にユーザーやグループを指定するだけで、対象者が自動的に割り当てられます。
1. プロセス管理の「3.プロセス」から、該当ステータスを選択
2. 作業者のパターンを選択
3. 作業者欄の「ユーザーを選択」アイコンをクリック
4. 固定で担当するユーザーやユーザーグループを選択
「次のユーザーから選択」など作業者の指定機能の使い方と注意点
業務によって担当者が異なる場合には「次のユーザーから選択」機能を使うと、アクション実行時にその都度作業者を指定することが可能です。
レコードの内容では作業者を決めきれない場合や作業者を能動的に選択していい場合はこの機能を活用できますが、そのステータスになる際に毎回選ばないといけないことだけ注意が必要です。
「次のユーザー全員」の場合は、設定されている作業者全員がアクションを実行することで次のステータスに進みます。複数部署の管理者全員が承認して初めてOKとなる場合などに使います。
「次のユーザーのうち1人」の場合は、設定されている作業者のうち誰か1人がアクションを実行することで次のステータスに進みます。
経理部の誰かがチェックしてくれたら次に進んでいいというような場合に使います。
さらに、フォーム上で「ユーザー選択フィールド」を設けておけば、申請内容に応じた担当者の柔軟な振り分けも実現できます。
ただし、この方式では通知設定や権限設定が正しく構成されていないと処理が止まってしまう可能性があります。
設定後には、フロー図やテスト運用で十分な動作確認を行うことが重要です。
アクションの設定方法
「アクション」は、ステータスを遷移させるためのボタンであり、業務プロセスにおいては承認・差し戻し・再申請などを指します。
各アクションにはボタン名・遷移先ステータス・条件などを設定することができます。
アクション設定の基本と活用パターン
1. アクションを設定したいステータス右側の「+」でアクションを追加
2. アクション名(例:「承認する」「差し戻す」など)を入力
3. アクション実行後のステータスを選択(例:「承認済」「差し戻し」)
差し戻し・スキップなどの操作とその挙動
アクションの設定では、「差し戻す」「再申請する」などの例外処理を含めることも可能です。
例えば、承認者が不備を確認した際に「差し戻す」アクションを選択し、申請者が「再申請する」ことでフローを元に戻す運用ができます。
1. 「差し戻し」アクションを設定し、戻るステータス(例:「差し戻し」)を指定
2. 「再申請」アクションを作成し、元のステータス(例:「上長確認中」)へ戻す
また、アクションには条件設定も可能で「金額が10万円以上なら社長承認」「未満なら上長承認」といったフロー分岐とスキップも構築可能です。
業務に応じて柔軟な設計を行いましょう。
kintoneプロセス管理の設計パターンとユースケース
kintoneのプロセス管理は基本的なステータス設定や通知だけでなく、業務の複雑な分岐やチーム承認といった高度な業務フローにも対応可能です。
本章では現場で実際に使われることの多い「条件分岐」「複数承認者対応」といった具体的な活用パターンについて、設定方法と注意点を交えて紹介します。
条件分岐を活用したフロー設計
プロセス管理では申請内容に応じてステータスの遷移先や作業者を変えるといった「条件分岐」を設定することが可能です。
これにより、業務の柔軟性が格段に高まり、画一的なフローでは対応しきれない複雑な業務シナリオにも対応できます。
申請内容に応じて承認ルートを変える
例えば経費精算フローにおいて、金額が10万円未満であれば上長承認で完了、10万円以上であれば社長の追加承認が必要、というような条件分岐が典型的な利用例です。
設定は以下の手順で行います。
- アクションを実行できる条件をそれぞれ用意する(例:合計金額 ≦ 99999 , 合計金額 ≧ 100000)
- それぞれの条件ごとに実行できるアクションボタンと実行後のステータスを設定する
- 条件を満たすと該当のアクションが表示・実行可能になる
条件分岐設定の具体例と構成パターン
kintoneのプロセス管理において条件分岐の設定は業務に応じた柔軟な承認ルートや処理フローを実現する上で欠かせない要素です。
条件式は主にアクションの「アクションが実行できる条件」項目で設定でき、フィールドの値に応じてステータスや作業者を変化させることが可能です。
代表的なパターンとして数値フィールドを使った金額や数量での条件分岐や、選択肢フィールドによるカテゴリ分岐があげられます。
以下にkintoneプロセス管理における、条件分岐設定の代表的な構成パターン一覧を業務シーンごとに整理しています。
運用の参考や設計書としてご活用ください。
パターン分類 | 条件の例 | 主な利用シーン | 備考 |
金額による分岐 | 合計金額 >= 50000 | 経費精算、稟議申請 | 高額時のみ上位者承認 |
カテゴリによる分岐 | カテゴリ = “契約関連” | 稟議・申請処理の部門振り分け | 特定内容の専門部署振り分け |
フラグ制御 | 再申請フラグ = “オン” | 差戻し後の再申請ルート制御 | 状況ごとの処理分岐に便利 |
組織別制御 | 所属部署 = “営業部” | 部門ごとのフロー分離 | 複数部門が同一アプリを使用する際に有効 |
複合条件 | カテゴリ = “設備投資” AND金額>= 100000 | 高額設備投資時の特別ルート制御 | より厳密な運用に適用可能 |
これらを活用することで「高額申請は上位承認」「特定部署のみ別フロー」といった設計が可能になります。
ただし条件が多重になりすぎると管理や修正が煩雑になるため、運用上はフロー図を併用して視覚的に整理しておくことが望ましいです。
kintoneのプロセス管理機能に関する設定や運用、カスタマイズにおいてご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
kintone開発の問い合わせ複数承認者・一括承認の実装例
kintoneでは1つの申請に対して複数の担当者が同時または順に処理するような「複数承認」や「並列処理」のフローも構築可能です。
チーム単位の対応や合議制の業務フローなどにおいて非常に有効な手法です。
複数作業者の設定方法と注意点
複数のユーザーを作業者に設定するには以下のような方法があります。
- 作業者欄に複数のユーザーやグループを登録
- 「次のユーザー全員」または「うち1人」などの設定を活用
- 必要に応じてユーザー選択フィールドを使って柔軟に割り当て
このように設定することで複数のユーザーが同じアクションボタンを操作できるようになります。
ただし通知が全員に飛ぶため通知量が過剰になるケースには注意が必要です。
また「うち1人」の場合は最初に処理した人の操作が全体を進めるため、誰が実行したかの記録管理にも留意する必要があります。
一括操作の可否と回避策
プロセス管理機能では原則として複数レコードに対する「一括操作(複数選択→一括承認)」は行えません。
これはアクション実行時に個別のステータス・作業者条件が影響するためです。
この制約を回避する方法としては以下の代替案があります。
- JavaScriptカスタマイズやプラグインを使った一括処理
- Webhookや外部連携サービス(例:gusuku Customine)での処理設計
完全な一括処理ではありませんが業務設計の工夫により運用負荷を抑えながら対応することは可能です。
本章で紹介した条件分岐や複数承認フローは業務規模や内容に応じて応用範囲が広く、実務での活用価値が非常に高い設定です。
kintoneプロセス管理でよくあるつまずきと対処法
kintoneのプロセス管理は柔軟で高機能な一方、初期導入時や業務変更時にはつまずきやすいポイントも多く存在します。
本章ではよくあるエラーや混乱の原因とその対処法を具体的に解説します。
運用中に起きやすいトラブルとその解消法をあらかじめ把握しておくことで、スムーズな実装と安定した業務運用を実現することができます。
作業者になっているはずのレコードが見られない原因と解決策
プロセス管理においてアクションボタンでプロセスを進めることは業務進行の命綱とも言える要素ですが作業対象のレコードが見られないというトラブルはよく発生します。
その原因はユーザー権限の不備など基本的な設定にあることがほとんどです。
ユーザー権限の見直しと対応
通知は通知先となるユーザーに適切な閲覧・操作権限があることが前提です。
例えば通知を設定していても該当レコードの閲覧権限がなければユーザー側には通知が届かない仕様になっています。
そのため以下ポイントを確認しアプリのアクセス権の見直しと通知対象となるユーザーやグループに閲覧または編集権限を付与しておく必要があります。
- 通知対象ユーザーがアプリやレコードの「閲覧」権限を持っているか
- アプリがスペースに所属している場合、そのスペースへのアクセス権を持っているか
- グループ権限で除外されていないか
アクションボタンが表示されないときの対処法
プロセスの実行中に「差し戻しボタンが表示されない」「ステータスが進んでも戻らない」といった現象はアクション設定や条件の設計ミスに起因する場合があります。
アクション設定の確認手順
アクションボタンが見えない場合、各ステータスに対して設定されているアクション内容を一つずつ確認する必要があります。
アクションのボタンが並んでいる順序も処理の流れと一致しているかを確認することで誤操作の防止にもつながります。
- ステータス間のアクションが正しく設定されているか
- ボタン名がわかりにくく、ユーザーが操作を迷っていないか
- アクションに条件がついていて、その条件が常に満たされているとは限らない状態になっていないか
- 実行者が作業者に正しく設定されているか
確認は「アプリの設定」>「プロセス管理」>各ステータス・アクション設定画面より行えます。
操作ミスを防ぐUIの工夫
プロセス管理におけるUI設計もつまずきを防ぐうえで大切な要素です。
ボタン名は具体的かつ行動を明示する表現にすることでユーザーの迷いを軽減できます。
例えば「承認する」「差し戻す」といった明確な言葉を使い、曖昧な「対応」や「確認」などは避けるべきです。
また、不要なアクションは非表示にし、ステータスとボタンの順序を業務フローに即した形にすることで、自然な操作が促されます。
作業者がうまく設定されない場合の対策
作業者の設定を行っても、実際の操作時に意図した作業者が設定されていないことがあります。
これもよくあるトラブルのひとつです。
作業者設定の不備と見直し方
作業者にはユーザー個人を設定することもできますが、そうすると人事異動があった際に毎回プロセス管理の設定を修正する必要が出てきてしまいます。
プロセス管理を設定しているアプリが1つだけであれば対応可能かもしれませんが、様々なアプリで使っている場合や、異動対象者が多い場合など、手作業でアプリを修正していると大変ですし、修正漏れの可能性も高まります。
- ユーザー個人ではなく、グループや組織で設定し、これらを更新することでアプリを修正しなくても作業者が設定されるようにする
- 人事異動の内容を組織やグループに反映するスケジュールや作業担当者を決めておく
代替手段の提示と説明
条件設定が複雑でうまく構築できない場合には代替策の活用も有効です。
例えばユーザー選択フィールドをあらかじめフォームに追加し、申請時に担当者を明示的に指定させる方法があります。また、「作業者以外でも実行できるアクションを作成する」機能を活用することで、代理でプロセスを進められるようにしておくということも可能です。
管理者が把握しておくべき運用ポイント
プロセス管理の安定運用には事前の確認と定期的な見直しが重要です。
設定担当者だけでなくアプリの管理者や業務部門とも連携しながら運用体制を整える必要があります。
運用前のテストシナリオの作り方
プロセス公開前には業務の代表的なケースを想定したテストシナリオを準備し、実際のユーザーと同じ権限で動作確認を行うことが求められます。
通常の申請→承認→完了という一連の流れだけでなく、差し戻しや条件分岐のルート、通知の内容やタイミングについても細かく検証することで、予期せぬトラブルを回避できます。
また、複数人によるクロステストを実施することで、さまざまな操作パターンに対応できるかを確認することが可能です。
以下ポイントをユーザー視点で一通り操作することで、公開後のトラブルを未然に防ぐことができます。
- 申請者→承認者→完了までの通常フロー
- 差し戻しや再申請が含まれるイレギュラーフロー
- 条件分岐による承認ルート変更の動作確認
- 通知やステータスログの表示確認
プロセス変更時の社内周知方法
既存のプロセスに変更を加える場合は、変更内容を関係者にしっかりと伝える体制を整えることが欠かせません。
kintoneの「お知らせ」機能を活用して変更概要を告知したり、マニュアルやFAQを更新したうえで対象部門に周知したりすることで、混乱を最小限に抑えることができます。
また、変更履歴を共有し、担当者がいつ・どこが変わったのかを把握できるようにすることも、スムーズな運用継続に役立ちます。
kintoneプロセス管理の応用活用
kintoneのプロセス管理は基本機能でも多くの業務ニーズに応えることができますが、さらに一歩進んだ業務改善や独自要件への対応にはカスタマイズによる拡張が効果的です。
本章ではプラグインやJavaScriptを用いたプロセス拡張や外部APIとの連携を通じて、より高度な自動化や処理制御を実現する応用的な活用法について紹介します。
実装の入り口として簡単なスクリプトや構成例を提示しながら実務に役立つヒントをお届けします。
プラグインやJavaScriptによるカスタマイズ
kintoneはフロントエンドのカスタマイズを許可しており、プラグインやJavaScriptを使うことで基本機能では実現できない処理を柔軟に補完できます。
例えば特定条件によるフィールドの自動入力やエラーチェックの追加などが可能になります。
現場の実情に合わせてkintoneを「より業務に寄り添う形」に変えるための手段としてプラグインやJavaScriptは非常に有効です。
独自アクションを追加する方法
標準のプロセス管理アクションでは対応しきれない業務処理を追加したい場合、プラグインやJavaScriptによって独自ボタンを作成し、そのクリックイベントに対して任意の処理を実行する設計が可能です。
例えば一覧画面「一括承認」や「作業者をまとめて変更」などのアクションボタンを画面上に表示し、クリックと同時に指定された処理を非同期的に走らせることができます。
ステータス制御のカスタムロジック
プラグインやJavaScriptを活用することでステータスの変更に関する条件をより詳細に制御することも可能です。
例えば特定のステータスの際に必須にするフィールドを設定したり、基本機能では制御しきれないアクションを実行できる条件がある場合にプラグインやJavaScriptによってボタンを押した時にエラーを出すようなことが可能です。
API連携で実現する自動化処理
kintoneではREST APIを活用することで他システムとのデータ連携が可能になります。
これにより、業務アプリ同士の情報連携や外部のSaaS・基幹システムとkintone間での双方向データ同期が実現できます。
例えば申請完了後に自動で会計システムへ伝票登録を行ったり、スプレッドシートへのデータ集計をトリガーに処理を実行することも可能です。
プロセス完了をトリガーにした自動化は作業負担の軽減とヒューマンエラーの抑制に大きく寄与します。
外部システムとのデータ連携例
代表的な連携例としては会計ソフト(freee、MoneyForward)、SFA(Salesforce、HubSpot)、チャットツール(Slack、Microsoft Teams)などがあります。
例えば申請の承認完了をトリガーとしてSlackに通知を飛ばす、取引先情報をSFAから定期的に取得してkintoneに自動登録するといった運用が実現可能です。
こうした連携にはkintone REST APIや外部サービスのWebhook機能が活用されます。
データ形式の整合性やエラーハンドリングの実装が重要な設計ポイントとなります。
自動処理の構成パターン紹介
自動処理の設計では「何をトリガーに」「どこへ」「どのような処理を」行うかを明確に定義する必要があります。
例えばレコードのステータスが「承認済」に変わった際に、外部APIを呼び出して在庫管理システムへ情報を送信する、といった処理構成が一例です。
kintoneでの処理内容に応じて、Node.jsやZapier、Power Automateなどの外部連携サービスを組み合わせることで、ノーコード・ローコードでも高度な処理の自動化が実現可能です。
まとめ
kintoneのプロセス管理は業務フローの標準化や対応の見える化、処理スピードの向上といった多くの利点を持ち、企業のDX推進や属人化対策において非常に有効なツールです。
本記事ではその基本機能から具体的なユースケース、実装パターン、さらにはJavaScriptやAPI連携を用いた応用活用までを段階的に解説してきました。
導入初期においてはステータスや作業者、アクションといった基本概念の理解が不可欠です。
運用段階では通知や条件分岐、作業者の自動設定といった実務に直結する機能を適切に活用し、業務に合った柔軟な設計を行うことが重要です。
また現場のニーズに応じてカスタマイズを加えることで、kintoneを単なる申請管理ツールにとどめず、業務全体のハブとして活用することができます。
一方で、設定ミスや運用トラブルを防ぐためには事前のテストや社内周知の体制づくり、管理者による定期的なチェックが不可欠です。
導入時のつまずきを最小限に抑えると同時に業務ごとに最適なプロセスを構築することがkintoneを最大限に活用する鍵となります。
プロセス管理を通じて業務の透明性と一貫性を高め、生産性の向上と社内の連携強化につなげていく。
その第一歩として、本記事が実践的な参考となれば幸いです。
弊社ではkintoneの初期導入支援からカスタム開発、外部システム連携、kintoneを強化するためのプラグイン「Smart atシリーズ」を提供しています。
業務にフィットした使い方を一緒に設計したいとお考えの方、具体的な支援内容や価格についてご興味・ご関心がある方はぜひお気軽にお問い合わせください。