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【対談】レクシンが上流工程を変える。 AIを活用したこれからのkintone開発とは
生成AIの急速な進化によって「SIerやプログラマーはもう要らないのでは?」という声は絶えない。
そこで今回は、kintoneのシステム開発に特化したレクシンAI for kintone(以下、レクシン)を提供するノベルワークス代表:満村氏と、kintoneのシステム開発も手がけ、kintone×AIサービス「Smart at AI」を提供するM-SOLUTIONS代表:植草が対談。
レクシンの登場によってkintone開発はどう変わるのか?ついにSIerは不要となるのか。
SIerやITコンサル、1人情シスで頑張る担当者などにぜひ読んでほしい対談となっている。
レクシンを提供する株式会社ノベルワークス
満村氏:株式会社ノベルワークスの代表:満村(みつむら)と申します。
金融系システムのシステム開発に携わる中でクラウドと AI に出会い、「今やらなければ」と一念発起し、2015 年にノベルワークスを設立しました。
事業の出発点は kintone 研修でしたが、「(kintoneの)ここを手伝ってほしい」という声が増え、現在は受託開発が主軸です。
AWS/Azure/GCP/Power Platform まで扱い、「ノーコード・ローコードで価値を早く届ける」を掲げて関西圏を中心に活動しています。
Garoon 連携の「ガル助」などプラグインを提供していまして、次の柱にと考えているのが「レクシン」です。
ブラックボックス化を防ぐkintone SIの設計術
SIerが抱える苦労と、kintone開発の特徴
満村氏:kintone 開発には、大きく分けて二つのスタイルがあります。
一つ目が「設計書は最小限、動くものを見せながらスピーディに作る」方式。
二つ目が「細かな設計書や業務フロー図を整備してから構築する」方式です。
一つ目の場合、業務フロー・ステータス遷移図・アプリ間のデータ関連図といった資料がないと「どうしてこの設計になったのか」を説明しづらい。
結果的に社内調整が滞ったり、数年後に担当が代わったときなどブラックボックス化したりします。
植草:kintone開発で難しいのは データモデルの設計です。マスターデータ(業務の基礎となる基本情報)とトランザクションデータ(基本情報に基づいて発生したデータ)の切り分け、将来の集計・帳票出力を見据えた項目設計、データ量が増えた際のパフォーマンス限界など…
こうしたポイントを外すと、3年後・5年後に「一から作り直し」になりがちなんです。
満村氏:植草さんがおっしゃる通り、「先を読む設計」が一番の肝ですね。
お客様が最初に口にされるのは、多くの場合「今この部署で困っている単発の課題」です。
ところが実際は、会社全体の業務改革やデータ活用まで視野に入れないと、本当の意味で課題は解決できない。
植草:「相手の言葉をそのまま鵜呑みにしない」ことは大事ですよね。
kintone の良いところは、画面をサッと作って「こんな入力イメージになります」と即座に見せられる点。
ゴチャっとした画面設計書を書くより、実際のアプリをプロトタイプにしてスクリーンショットに注釈を付ける――このほうが早い段階でお客様と認識合わせができて、フィードバックもすぐ返ってきます。
満村氏:そうなんです。kintoneはサッと作れるので、「設計なんて要らないんじゃ?」と思う方もいると思います。
ところが複数アプリが連携し始めたときなどは注意が必要となり、設計書が必要となってきます。設計書作りでの課題は大きく2つ。
①スピードの非対称性
kintone は画面改修がすぐ終わる一方、ドキュメント修正は人手が要る。
アプリは最新版なのに設計書は昨日のまま――この“ズレ”が放置されがちです。
②ドキュメント先行のリスク
逆に設計書を先に直すと、今度は「画面反映がまだ」となり、「どっちが正なの?」 という混乱が起こります。
レクシンとは-レクシンが埋める「ドキュメントとアプリのズレ」
満村氏:レクシンは、そんな 「ドキュメントとアプリの非整合」という課題を解決するサービスです。
レクシンにはアプリの最新の状態を設計書として書き出せる機能や、「なぜその項目を作ったか」などのお客様との議事録も残すことができます。レクシンを使えば、
① ドキュメントベース、もしくはアプリベースで作成する
② 実際に動かして、改善していく
③ 最終段階でレクシンを使い、もう一度設計書を書き出す
という「ドキュメントとアプリの整合」を簡単に取ることができるようになります。
植草:打合せの内容が溜まっていって、途中経過も全部“見える化”される――ここがポイントですね。
今までは議事録を渡されても「書いてあるけど…要するに何?」で終わることが多かった。
正直、議事録は SIer が“保身”のために残している側面もあって、お客様からすると読み解けない(笑)。
でもレクシンなら、当時どんな会話をしてどう判断したかが記録として残っている。あとから経緯をたどることができるから安心ですね。
満村氏:そうですね。実際に社内でも利用しています。
β版をご利用のお客様からはレクシンを使った設計書を使いながら受注したというお話もすでに伺っております。
三位一体で実現するkintone×AIの最適解
レクシンとChatGPTの違い
満村氏:ChatGPT との一番の違いは、「ユーザーがプロンプトを考えなくても目的の成果物が出る」 という点です。ChatGPT で欲しいアウトプットを得るには
・どんな形式でまとめたいか
・どこまで詳細が要るか
・誰向けの資料なのか
――こうした条件を「きちんとプロンプトに落とし込める人」でないと、うまく使いこなせません。
指示が甘いと、「ポンコツな回答が返ってきた。AI は使えない」となりがちなんです。
レクシンはその壁をまるごと取っ払いました。
打ち合わせの文字起こしやメモをポイッと放るだけで、どのフィールドが何のために存在するかまで整理された 設計書 が自動で出てくる。
生成 AI の力はそのままに、操作のハードルだけを徹底的に下げた――そこが ChatGPT 単体利用との決定的な違いだと考えています。
各社サービスとkintone AIラボとの違い
満村氏:kintone AIラボは要件を伝えると単体のアプリを作ってくれるサービス、と理解しています。
レクシンもアプリ自体は作れますが、中心は「なぜそのアプリが必要で、項目にどんな意味があるのか」という 上流設計の提示です。ですから、
・アプリをポンと作るなら→kintone AIラボ
・その作る理由と設計意図をまとめるなら→レクシン
という住み分けだと思いますし、むしろ相乗効果が出せると思っています。
レクシンで要件を固め、まとめた内容をkintone AIラボにそのまま伝えれば、きれいに作れるかもしれません。
植草:kintone AIラボが広がれば「AIをkintoneで試してみよう」というユーザーが増える。これは大歓迎です。
「もっと深く AI を組み込んで業務全体を回したい」と思ったら Smart at AIを選んでもらえればいい。
・試しに AI に触れてみる、一般的な機能を素早く使うなら→kintone AIラボ
・ガンガンAIを活用していきたいのなら→Smart at AI
って感じですかね。
Smart at AIとは:誰でも簡単・安全・効率的にkintoneの情報(データ)を用いてChatGPTなどの生成AIが利用できるようになるkintone連携サービス |
満村氏:私も同意です。レクシンで理由と設計を整理し、kintone AIラボでアプリを作成。
そしてSmart at AI で運用を効率化・自動化する——この三段構えなら、開発から日常業務まで AI が自然に溶け込みますよ。
“作る”と“活かす”で生まれる未来
レクシンとSmart at AIとのシナジーについて
満村氏:開発はレクシンでほとんどカバーできますが、会社の業務全体を見ると開発以外のタスクのほうが圧倒的に多いですよね。
そこを埋めてくれるのが、汎用性の高いSmart at AIです。
レクシンが「こういう管理項目が必要だから、このアプリ構成にしよう」と設計図を用意する──そのアプリや、溜まったデータをどう活かすかはSmart at AIの柔軟さに任せる。
要するに、レクシンがアプリを整え、Smart at AIがそのアプリをさらに有用にしてくれるのではないでしょうか。
植草:レクシンでアプリを設計している最中に「ここは生成 AI を絡めればもっと効率化できる」というポイントが出てきたら、Smart at AIをレコメンドする。
逆に、kintone に溜まったデータをSmart at AIで集計・分析して、レクシンに戻す──こんな往復ができれば最高ですね。
満村氏:まさにです。レクシンが設計したアプリに対して、「このシステムならSmart at AIにこんなプロンプトを仕込めばさらに効率化できますよ」とテンプレートを添えてしまえば、ユーザーは何も考えずに高機能な仕組みを手に入れられる。
しかもSmart at AIは、生成 AI 側の進化を丸ごと取り込める。
新しいAIモデルが出てもすぐ追随できるわけで、その柔軟さはレクシンと相性がいいと思います。
レクシンによってSIerは不要になる?
満村氏:全く不要にはなりません。
レクシンは SI のやり方を「変える」ツールであって、 SI そのものを不要にするものではありません。
私たちはこれまで、人間がやらなくてもいい作業に、時間を費やしてきました。
そこを生成 AIに手伝っていただこうってだけです。
では、余った時間で何をするか。もっとお客様の“本質的な課題”に向き合うのが、これからの SIer だと思っています。
植草:「AI で仕事がなくなるんじゃないか」という声はよく聞きます。
ただ、それって産業革命で「もっと速い馬車が欲しい」と言っていた頃の話に近いと思うんです。
実際にはもう自動車が用意されていて、さらに電車や新幹線、飛行機だって出てくる。
手段が変わるだけで、目的――遠くへ行くこと――は変わらないんですよね。
AIを意識せずに次のDXへ
kintone×AIの今後
植草:今は「どこで AI を使えば一番効くのか」を皆が手探りしている段階ではないでしょうか。
性能も3か月、6か月でガラッと変わるから、まずは怖がらずに触ってみることが大事だと思っています。
Smart at AI でやりたいのは、「ユーザーがAI を使っていると意識しないまま効率化が進む」世界。
たとえば私はkintone内の日報を全部Smart at AIに集計させてLINE WORKSで自動配信しています。
kintone が苦手な集計やバッチ処理、そして「結果を届ける」部分を AI で肩代わりする――この体験を一度味わうと戻れません。
ですから、用途に応じてレクシンとSmart at AIを組み合わせたり、必要なところだけ試したりして、まずは体感してほしいですね。
満村氏:kintone には二つの側面があります。
一つは「業務システムの UI」としての側面。もうひとつは「クラウドに蓄積されたデータ」の側面。
UI を素早く組み立てる――ここはレクシンが得意な領域です。
一方、蓄えたデータをどう集計し、どう見せるか――ここはSmart at AIの取り組みが鍵になる。
ノーコード/ローコードの柔軟さに AI が合わさることで、「DX の第二段階」が誰にでも開ける。
全社でデータを回し、数字を根拠に舵を切る企業が一気に増えると期待しています。
今後の展望
植草:Smart at AIの利点として、ユーザーが kintone だけ見ていれば ChatGPT や Claude、Gemini の進化を意識しなくて済むことが挙げられます。
たとえば2025年4月14日リリースされた GPT-4.1 もすぐ社内で検証しました。「使えると判断したモデルは、設定いらずで皆さんに届ける」――そこが僕らの役目です。
また2025年の Cybozu Days に向けて毎月アップデートを続けています。
正直、実装した機能は山ほどあるんですが、ユーザーが実際に使うのは1割程度。パワーポイントと同じですね。笑
それでも「いずれ自然と使われるなら先に用意しておこう」という方針です。
ですから今後も 「月次アップデートが基本」という感じやっていきます!
満村氏:レクシンは、SI や IT コンサルなど「お客様の DX を進める側」 に楽をしてほしいという想いから始まっています。
AI に任せられるところは任せて、人は本質的な業務を行い、多くのお客様を一緒に助けたい、その入り口として使ってほしいです。
生成 AI が進化すれば、最終的にはエンドユーザーが話しかけるだけで UI が組まれ、ドキュメントも完結する世界になるはずです
レクシンも無料版をご用意しています。
まずは触ってみて、「AI って意外と身近だ」と体感してほしい。
そこから「この機能はレクシンに任せよう」「ここはSmart at AIがいい」と選べばいいんです。
生成 AI にどんどん触れて、みんなでラクしていい世界を作りましょう。
まとめ
レクシンの登場により、kintone開発は「本当に向き合うべき価値創出の時間を作り出す」ことができるようになる。
kintone AIラボも登場し、“つくる・活かす・未来を描く” 三位一体の新ステージに入ってきた。
手探りの状況の方も多いかもしれないが、まずは各社のAIサービスに触れてみてほしい。
この記事が kintoneの開発会社、ITコンサルに携わる方などのヒントになれば幸いです。
ご興味を持たれた方は、ぜひ各社へお問い合わせください。
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