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Smart at AIユーザー会のパネルディスカッション
M-SOLUTIONS株式会社は3月6日、Smart at AI for kintone Powered by GPT(以下、Smart at AI)利用者向けのユーザー会を開催しました。
ユーザー会は4部構成となっており、
- Session1:M-SOLUTIONS株式会社 代表取締役社長CEO植草からの挨拶
- Session2:有限会社矢内石油さま、エン・ジャパン株式会社さま による事例登壇
- Session3:サイボウズ社からのAIに関するアップデート情報の説明
- Session4:サイボウズ社とそのパートナー企業によるパネルディスカッション
本記事では4部「パネルディスカッション」の内容をご紹介します。
パネルディスカッションの登壇者
以下の方々に登壇いただきました。
株式会社ジョイゾー 四宮 靖隆様
ペパコミ株式会社 小川 喜句様
ソウルウェア株式会社 吉田 超夫様
サイボウズ株式会社 山田 明日香様
M-SOLUTIONS株式会社 植草学
パネルディスカッションではkintoneとAIに関する、次のテーマについてパネルディスカッションが行われました。
- kintoneでAIをやる意味とは?
- kintone×AIの現在位置
- kintone×AIの未来
kintoneでAIをやる意味とは?
司会:それではパネルディスカッションを始めていきたいと思います。
最初は『kintoneでAIをやる意味とは?』についてお話を伺いたいと思います。
まずサイボウズの山田様よりお願いいたします。
山田氏:先程のSession4でお話した通り、kintoneはシステムを簡単に作って業務改善できる点が売りで、それによって会社の競争力を向上させます。
その上でkintoneとAIは相性が良いと考えています。
特にデータ活用の面では、kintoneはアプリを作ることで社内のデータを整理できます。
AIを始めたいと思った時に社内のデータがExcelや紙だと使えないことがありますが、kintoneでアプリを作っておけば、すぐに始められます。
その点でkintoneとAIの組み合わせは効果的です。
司会:ありがとうございます。サイボウズのパートナー目線ではいかがでしょうか?
吉田氏:当社はkintoneと連携する帳票サービス「レポトン」を提供しており、そこにAIを組み込もうとしています。
AIに取り組む理由は、この流れに乗り遅れると業界内で製品の魅力が薄れることを危惧しているからです。
帳票とAIを結びつけるのは難しかったですが、何とか取り入れようとしています。
レポトンは帳票出力製品ですが、kintoneアプリがあった上で紐付け設定を行い、帳票出力の設定をします。
レポトンの設定は簡単と市場から評価をいただいていますが、さらに改善できると考え、帳票をアップロードしたらkintoneアプリの作成も帳票とアプリの紐付け設定も全てAIが行う仕組みを開発しています。
これは帳票設定からkintoneアプリを作成できる仕組みで、一般的な帳票作成サービスとは逆のプロセスを実現します。
顧客ニーズに応える新しい方法として開発に取り組んでいます。
司会:レポトンのAI機能はベータ版はありますか?
吉田氏:はい、あります。
自社製品の宣伝は考えていませんでしたが、『レポトン』で検索いただければベータ版を利用できますので、ぜひお申し込みください。
2025年4月1日にレポトンのAI機能が正式リリースとなりました! 詳細は下記をご覧ください。 |
司会:続いてSmart at AIをkintoneでやる意味とはどのようなものがありますか?
植草:kintone本体にAIを組み込むのは技術的に非常に大変で、kintoneプラットフォームへのAI機能の迅速な追加を過度に期待すべきではないと思います。
一方、エコシステム側の私たちはkintone本体の開発より比較的容易に開発できるため、新しい情報を素早く取り入れて反映することが可能です。
kintoneユーザーが無料でAIを利用できる環境を私たちの開発で実現したいと考えています。
kintoneではノーコード開発を推進していただき、Smart at AIではノープロンプトでもAIが活用できることを広く普及させたいと考えています。
司会:ありがとうございます。
システム構築の視点から、ペパコミさんとジョイゾーからも意見をいただければと思います。
小川氏:AI×kintoneというテーマだとユーザー視点と開発会社視点があります。
ユーザー視点でいうと、私たちはシステムやAIに良い意味で活用される時代が来ると思います。
例えばタスク漏れしやすい社員がいれば、その傾向を蓄積して、問題が発生しそうなタイミングで『ここは大丈夫ですか?』と推奨してくれたり、営業日報を記録していれば、アップセルやクロスセルのタイミングを教えてくれたりする時代が来るでしょう。
kintoneの開発会社としては、AIの可能性を深く理解し、それを前提に設計する能力が必要です。
kintoneはプラグインで簡単に機能を追加できますが、今後はそのようなことに加えてコミュニケーションスキルやAIの知識、事例を基にした提案が重要になります。
ユーザーの皆さんもAI活用事例を蓄積されていきますし、私たちもそれを踏まえて価値を提供しなければ生き残れないと思います。
司会:ジョイゾーさんはいかがでしょうか?
四宮氏:kintoneでAIを活用する意義は明確であり、むしろ活用しない選択肢はないと考えています。
kintoneの最大の利点は中小企業が社内業務システムをほぼ全てkintoneで対応できる点です。
これにより社内データが全てkintoneに集約されます。
kintoneでは顧客関連の多様なデータを蓄積/連携することで、一元管理できます。
このデータこそが将来の重要な資産になります。
現在もこれらのデータから分析は可能ですが、AIの導入により自然言語で必要な情報を簡単に抽出できるようになります。
今後は生成AIだけでなく予測AIも活用すれば、限られたデータからでも売上予測や市場成長率の見込みが把握できます。
通常なら多額の費用をかけてデータを収集する必要がありますが、これが中小企業でも実現できる点が非常に重要です。
kintoneの開発会社としては、このAI技術を活用した価値提供の仕組みやノウハウを蓄積していく必要があると考えています。
kintone×AIの現在位置
司会:続いて次のテーマはkintoneとAIの現在位置について話していただければと思います。
四宮さんはいかがでしょうか?
四宮氏:M-SOLUTIONSさんがSmart at AIを出したことは大きいと思います。
AIの民主化という意味で、プロンプトを意識せずに直感的にAIを使えるものができたのは大変重要なことです。
サイボウズ自身もパートナーのソリューションに乗っかっているのは、エコシステムを重視しているサイボウズだからこそできる取り組みだと思います。
植草:もともとkintoneと連携するAIツールを開発しようとChatGPTを触っていました。
実はSmart at AIを出すまでに約半年かかりました。
というのもChatGPTはMS-DOSのプロンプトが出てきた時ほど衝撃的に素晴らしく、画期的で世界が変わると感じました。
しかしChatGPTのUIがあまりに優れていたため、kintoneの右側にチャット欄を表示させる案なども考えましたが良くありませんでした。
もう少しkintoneらしいサービスを作れないかと考えて構想から半年かかって、ようやく今の形になりました。
現在のAIの状況としては、プロンプトを書ける人は仕事をしている人のうち、10人に1人程度だと思いますし、全員がプロンプトを書ける必要はないと思います。
これからは推論モデルなども登場し、プロンプトを書くことは次第に不要になっていくでしょう。
文章を上手に書けるのは一部の人だけで、苦手な人も多いと思います。
そんな時に文章が得意な人(プロンプトが書ける人)が基本となるプロンプトを作り、他の人はプロンプトなしで使えるようになっていくのが良いと考えています。
毎月のアップデートは大変ですが続けています。
四宮氏:そこなんですよ。
最初リリースされて機能を試していった時に、毎月のように進化していることに驚きました。
『無償版でこんなに対応して良いのか』と思うほどです。
ベンダーとしてはこのスピードでアップデートしているのが本当に素晴らしいと純粋に感じています。
植草:モデルの追加対応は本当に大変です。
毎朝最新情報をチェックしており、新しいモデルがリリースされると楽しくなって朝からAPIを叩いています笑。
その楽しさの勢いで開発を続けています。
小川氏:OpenAIの12日間連続リリースなどがありましたが、私たちはそれらのリリース解説をまとめて収録しています。
その時は初日にGPT-4oのリリースの話が出てて、最後にはo1という新しいモデルの話が出ていました。
モデルの話なのに12日間の間に2つも出てしまう、そのくらいのスピード感がAI業界にはあります。
対応は本当に大変だと思います。
植草:でも楽しいんです。
多くの人に使ってもらえることも嬉しいですし、現在の状況としては各社が自社でどう活用できるか模索している段階だと思います。
大手のサービスも機能の1割程度しか使われていないそうです。
だから当社の機能も1割くらい使われれば良いと考えて開発しています。
kintone×AIの未来
司会:最後にkintoneとAIの未来について、ディスカッションしてもらいたいと思います。
今年に入って、DeepresearchやClaude3.7など3月なのに進化が目まぐるしい状態です。
そんな中、未来について聞いていきたいと思います。
四宮氏:まさにAIを使わない選択肢はないです。
当社では強制的に使うようにしています。
今後、使わない企業と使う企業の間で競争力格差があっという間に生じると思います。
ワクワク感9割と危機感1割が両方ありますが、kintoneの開発会社・プラグインメーカーである私たちとしても、AIを組み込むとどんな価値を出せるかが見えてきたので、今後皆様にもお伝えしていきたいと思います。
小川氏:当社も社内でAIを強制的に使わせたり学ばせたりする環境を作っています。
AIの使用有無で差が出るので取り組むべきです。
AIに関しては、kintoneのときもあったのですが、どうすれば良いかわからない層が多いと思います。
kintoneユーザーはAIと相性が良いと思います。
一般的なAI利用者はプロンプトのテンプレートを作って渡そうとしますが、kintoneの管理者ユーザーは利用ユーザーがプロンプトを書かなくてもAIの恩恵を受けられるようにするためにはどうしたら良いかという発想があります。
これはkintoneユーザーだからこそできることです。
kintoneをどうやってユーザーに使ってもらえるかを考えているからできることだと思います。
そのため、kintoneユーザーに足りないのは純粋にAIの活用事例だけだと思います。
できることがわかれば、自分たちで自走できる能力やコミュニティがあります。
皆さんがkintone×AIを積極的に活用してアウトプットを共有すれば、他の業界より浸透する可能性が高いと思います。
そのようなコミュニティができれば良いと思っています。
吉田氏:未来を考えることは難しいと考えています。
AIのアップデートはものすごく速く、私たちが考えている新機能はどんどん組み込まれています。
そんな中、2点言いたいことがあります。
M-SOLUTIONSのSmart at AIがAIの進化に合わせて製品も進化することは素晴らしいです。
よくあるプロダクトとしてはAIの進化に合わせて機能追加はしているが、その追従に追いつけなくなって陳腐化してしまうケースがあります。
それがSmart at AIは毎月のようにアップデートしていて素晴らしいです。
もうひとつ、先程発表された事例を見て思ったのは、使うことに恐怖心がある方へプロンプトを作ってあげる姿勢が共通していることです。
AIの世界には正解はありません。
正解を求める必要はなく、AIを作っている会社でさえ完全には理解していません。
だからこそAIを使うしかなく、うまく乗りこなせればそれで良いのです。
サイボウズさんには使いやすいAIを組み込んでいってほしいと思います。
山田氏:サイボウズとしては、使いやすいAIを作って提供できれば良いと思っています。
そんな中、まだ使っていないお客様がいらしたら、とりあえず試してみることも大事だと思います。
kintoneでも今後AIを出していく予定で、3万5千社のお客様に届くものを提供します。
いろいろなものを試したい方には、Smart at AIをはじめパートナー各社のAIが多数出ていますので、簡単に試せる環境があります。
ぜひパートナーが提供している製品を試していただければと思います。
植草:AGI・ASIのロードマップを共有しましたが、AGIは人間の持つ知性の10倍ほどになり、従来は10年での到達と言われていたものが3〜5年で達成されるかもしれません。
その過程で、タスクを分解して処理するオペレーターという仕組みやDeepresearchなどが登場します。
次に新しいものを創造するイノベーターが現れ、その後に会社組織のような一人ずつエージェントを持つオーガニゼーションという段階に進みます。
そうなるとkintoneは画面を見なくても、自動的にデータが入力され、グラフ化もリクエストすれば、即座にできるようになると思います。
私たちはそれをkintoneユーザーにも使いやすい形で提供したいと考えています。
そのためには皆様の声が必要ですので、機能改善のフィードバックをいただけると嬉しいです。
アップデートも頑張りながら開発を進めていきますので、よろしくお願いします。
司会:以上でお時間になりますので終了とさせていただきます。
ありがとうございました。